大分合同新聞 法律あれこれ「同僚に横領のうわさ」清源万里子弁護士/記事PDF

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 Q 私の所属している組合の会計担当者が、組合から横領したといううわさを聞きました。忘年会で返還を求めたところ、「名誉毀損(きそん)で訴える」と言われました。名誉毀損になるのですか。


A 人は、一定の社会的評価を受けて暮らしています。この評価(名誉)は、法的に守られるべき権利です。従って、そのことが虚偽であっても、真実であっても社会的評価を害すること(この場合、横領)を他の組合員がいる忘年会で、具体的に示すことは、原則として不法行為(名誉毀損)となります。

 結果的に個人の名誉を毀損することになっても、事実を公表することが表現の自由(公共性、公益性)の観点から許される場合もあります。つまり、その行為が、公共の利害に関すること(事実の公共性)で、専ら公益を図るのが目的(目的の公益性)であり、示した内容が事実であること(真実性)が証明されたときは、違法性がないとされ、不法行為は成立しません。

 また、事実であることが証明されなくても、事実が真実と信ずるだけの相当の理由がある(真実相当性)ときには、故意もしくは過失がないと判断されます。

 この場合も、表現の自由の観点から、違法行為かどうかを検討することになりますが、一度、弁護士に相談することをお勧めします。

 (弁護士 清源万里子)

令和2年2月6日 大分合同新聞朝刊掲載

公表、名誉毀損の恐れも