大分合同新聞 私の紙面批評「的確な問題提起に期待」清源万里子弁護士/記事PDF

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的確な問題提起に期待

 新型コロナウイルスの感染拡大で、学校現場は長期間にわたる休校を余儀なくされた。休校自体はやむを得ないものであるが、それにより、さまざまな問題が表面化した。
 全ての子どもに、学習の機会が等しく保障されるべきだが、地域や学校、家庭によって授業の進み具合に格差が生じ、中でも恵まれない環境の子どもたちが一層、厳しい状況に置かれた。5月11日付「論説」が指摘するように満足に食事ができない児童の命綱となる給食はなく、自宅にいられない少女が性被害に遭う心配もあるのだ。
 さらに親が休業や在宅勤務となり、家族が一緒に過ごす時間が長くなることで、児童虐待やドメスティックバイオレンス(DV)が起こりやすくなっている。
 虐待やDVの背景には、貧困や孤立など、複雑な社会問題が横たわっていることが少なくない。長引くコロナ禍の中で、解雇や雇い止めで家計も悪化、深刻な事態となることが懸念されている。そうした中、5月24日付論説の「かすかなSOSも見逃さず、着実に支援・救済につなげる態勢を整えるべき」との指摘は的を射ていた。
 そのためには児童相談所や警察、学校、DVの相談センターなどの関係機関と、民間の支援団体や地域住民が連携して、虐待、DVにおびえる子どもらとの接点を確保する必要があり、社会全体の関心を高めることも重要な鍵となる。
 世界中にあっという間に広がった新型ウイルス。経済活動を含め、さまざまな影響が出ている。こうした問題に直面したとき、どう乗り切るのかが大切で新聞がヒントを与えてくれる。
 例えば、5月18日付の「東西南北」。時間差出勤で朝の時間がゆったりと感じられ「もっと速度を緩めて生きてもいいのではないか」とつづっている。何事も気の持ちようだと勇気づけられた。自宅で楽しく過ごすヒントになる記事もありがたい。私は料理や菓子作りが大好きなので、4月28日付、5月5日付に掲載された「料理研究家・阪下千恵さんレシピ」のように子どもと一緒に作れる料理の紹介はとてもうれしい。
 緊急事態宣言は全国で解除されたが、予断は許さない。私たち読者が新聞から受ける影響は大きい。未曽有の苦難を乗り切るため、的確な問題提起、情報提供に今後も期待したい。

令和2年6月14日 大分合同新聞掲載