大分合同新聞 法律あれこれ「受忍限度超えた騒音」 清源万里子弁護士/記事PDF

→記事PDF

受忍限度超えた騒音

Q 私の家の隣に住んでいる人は毎年、米や麦を収穫した後、乾燥機を動かしています。そのため騒音に悩まされ、人間らしい生活をすることができません。どうしたらよいのでしょうか。


A あなたには、人間として生存する以上、人間としての尊厳にふさわしい生活を営む権利があります。各人の人格に本質的な生命や身体、精神、生活に関する利益の総体を「人格権」といいます。受忍限度(我慢しなければならない限度)を超えた騒音は、人格権を侵害していると評価されます。

 自治体によっては、条例で、地域別や時間帯別に騒音の規制基準を定めているところもあります。住んでいる自治体に規制条例があるかどうか、問い合わせてみてください。騒音が規制値を超えていれば、行政の指導を求めることで解決することもあります。
 あなたが今後、円満に生活していきたいというのであれば、第三者(区長や自治委員など)に仲介を依頼して話し合うのが最良の方策と思います。
 しかし、話し合いができなければ法的手段に訴えるほかありません。受忍限度を超えた騒音については、自治体に規制条例があるかどうかにかかわらず、人格権侵害を主張して生活妨害禁止を裁判所に訴える(仮処分と本裁判)ことになります。早急に生活妨害をやめさせたければ、「妨害禁止の仮処分」を申し立てます。手続きが煩雑なので、詳しくは弁護士に相談してください。
 仮処分の裁判で和解が成立することも数多くあります。仮処分の申し立ては有効な早期紛争の解決策といえます。和解ができなければ、慰謝料の請求も含めた本裁判によって解決を目指すことになります。

平成30年3月15日 大分合同新聞朝刊掲載

仮処分の申し立てを