大分合同新聞 法律あれこれ「性的虐待と離婚・慰謝料請求」 清源万里子弁護士/記事PDF

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性的虐待と離婚・慰謝料請求

 

Q. 私は10歳の娘を連れて現在の夫と再婚しましたが、夫が養女である娘に対して性的虐待をしたため家庭は完全に崩壊してしまいました。私は夫を許すことができず、離婚や離縁、慰謝料請求を考えていますが、可能でしょうか。


 A. 性的虐待をした夫に対する離婚や離縁、慰謝料請求について考えてみましょう。

(1)娘からの慰謝料請求
 性的虐待を受けた娘は、夫(養父)に対して不法行為に基づく慰謝料請求ができます。ただし、娘と離縁をする前の夫はまだ娘の親権者なので、娘が夫に対して慰謝料請求をするには、夫と娘の利益が相反することを理由に、娘のために特別代理人を選任する必要があります。
 特別代理人の選任には時間も費用もかかるため、先に、次の(2)の離縁の請求をした方が得策です。
 性的虐待を理由にした離縁請求は早期に認められると思われます(慰謝料請求の時効は3年ですが、本件の離縁裁判は3年以内に終わるでしょう)。娘と夫が離縁すれば、あなたが娘の単独親権者となりますので、特別代理人の選任は必要なくなり、あなたが娘の法定代理人として夫を相手に慰謝料請求(調停や裁判)をすることができます。

 (2)離縁請求
 養父が養女に対して性的虐待を行う事は縁組を継続しがたい重大な事由に当たるので、夫に対して離縁請求ができます。法律上、離縁を請求する場合、特別代理人の選任は必要ではなく、あなたが原告となって夫を相手(被告)にして、夫と娘との離縁を求める事ができます。

 (3)離婚請求
 養女に性的虐待をする夫とは円満な婚姻を継続することが困難なので、夫の性的異常を理由に夫に対して離婚、および慰謝料請求をする事ができます。

養父と娘の離縁を先に