大分合同新聞 私の紙面批評「子どもの貧困、広く伝えて」清源万里子弁護士/記事PDF

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子どもの貧困、広く伝えて

 8日付の本紙朝刊は、設立から半年を経た「フードバンクおおいた」の実績と課題について紹介した。寄付された食品が賞味・消費期限内に配布できるよう管理されている様子や、フードバンクを知ってもらうために作ったポスターとチラシ、食品に貼るシールもカラー写真で添えられていて、分かりやすかった。
 米や缶詰など、これまでに約4・5トン分の食材を市町村の社会福祉協議会や子ども食堂などに提供したという。相対的貧困状態にある母子への支援がフードバンク設立の大きな目的の一つであるが、対象となる世帯が見えにくく、いかに把握していくかが課題であると書いていた。
 厚生労働省の国民生活基礎調査によると、子どもの相対的貧困率は1990年代半ば以降、おおむね上昇傾向で2012年は16・3%だった。子どもがいる現役世帯の相対的貧困率は15・1%だが、このうち大人が1人の世帯は54・6%で、大人が2人以上の世帯の12・4%に比べて大変高い。統計からは非正規労働者が増加する中、「ひとり親家庭」の貧困が深刻であることがうかがえる。
 農林水産省が09年に20~60代を対象にインターネットで調べたところ、フードバンクの活動を「知らなかった」という回答が74・8%を占めた。実に4人に3人だ。フードバンクは支援を受ける側だけでなく、支援する側にも食品ロスを有効活用できるなどメリットの多い制度である。これから周知が進めば、活用の増加が見込まれるだろう。
 フードバンクおおいたを設立した県社協の高橋勉会長が「(貧困への)責任のない子どもたちが、おなかいっぱい食べられる体制づくりを目指したい」と述べている通り、相対的貧困状態にある子どもたちへの支援は必要不可欠だ。少子高齢化が進む中、子どもたちは人類共通の宝である。子どもたちが、貧困を理由に明るい未来を諦めなければならないような事態は避けなければならない。
 その第一歩として、子どもの貧困の深刻さや、フードバンクのような誰もが活用し得る制度を広く伝えることはとても大切だ。紙面が新年の話題に偏りやすい時期に取り上げたフードバンクの実績、課題の記事はインパクトがあった。今後も子どもの貧困問題や対策などの情報を積極的に紙面で伝えていただきたい。