大分合同新聞 法律あれこれ「はんこの貸し借り」清源万里子弁護士/記事PDF

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 はんこの貸し借り

Q. 中学時代の同級生から、はんこを2、3日貸してくれと頼まれました。この同級生は私の親友です。悪用はしないと思いますが、問題はありますか。


A. 親友といえども自分のはんこを預けるのは危険です。注意してください。
 はんこには、(1)市町村に届け出て印鑑証明書の交付を受けられるようにしてある「実印」と(2)実印以外の「認印」があります。

 実印は1人1個に限られ、認印は何個でも持つことができます。慣習上重んじられるのは実印ですが、押印の法律上の効力は実印、認印とも変わりません。この点を誤解して実印でなければ効力がないように言う人がいますが、認印でも効力は生じます。
 ところで、同級生が無断であなたのはんこを押印した場合、本来は、あなたに押印の法律上の効果は及ばないはずですが、同級生が承諾を得て押印したのか、無断で押印したのかは第三者には分かりません。
 そこで、法律は、契約書の署名欄にあなたのはんこが押印されている場合は、意思に基づいて契約書は有効に作成されたものと「推定」します。(民事訴訟法第228条第4項)。従って、よほどの事情がない限り、あなたのはんこが押された契約書(ひょっとすると1千万円の借用証書かもしれません)は、意思に基づいて作成されたものと認められ、あなたに押印の法律上の効果が及ぶことになります。以上からも分かるように、安易に自分のはんこ(認印でも)を人に貸すのはやめるべきです。
 なお、あなたのはんこを無断で使用して取引文書を作成した同級生には文書偽造罪、さらに同級生が取引文書を使った場合は偽造文書行使罪が成立します。その結果、第三者をだまして利得した同級生に詐欺罪が成立するのは別問題で、これは刑事問題です。

認印でも有効、注意を