大分合同新聞 法律あれこれ「不貞行った妻から離婚請求、認知無効にできる?」 清源万里子弁護士/記事PDF

→記事PDF

不貞行った妻から離婚請求、認知無効にできる?

Q 私は、10年前に結婚しました。その時、妻が結婚前に他の男性との間にもうけた子を認知しました。今は別居中です。別の男性と付き合っている妻から離婚と生活費を請求されていますが、支払わなければいけませんか。また、認知を無効にすることはできますか。


A 不貞を行った妻からの離婚請求は、原則として認められていません。あなたが協議離婚か調停離婚に応じない限り、離婚は困難と思われます。一方、妻と不貞相手に対しては、離婚の有無にかかわらず慰謝料を請求することができます。

 生活費は、離婚が成立するまでの間、妻に支払う必要があります。具体的にいくら支払えばよいかは、裁判官らで組織する東京・大阪養育費等研究会の作成した算定表が参考にされています。なお、不貞を行った妻からの生活費の請求は信義則上、養育費(生活費より低額)の額まで減額されます。
 認知の無効については、認知そのものの無効を主張する必要があります。あなたが認知している限り、養育費を支払わなければなりません。また、あなたが亡くなった場合は、子はあなたの相続人になります。
 民法785条では、いったん認知をすれば取り消すことができないと規定しています。一方、同786条では、利害関係人は認知に対して認知無効を主張することができるとしています。
 ご相談のケースでは、認知した人も同786条の利害関係人として認知無効を請求できるかが問題となります。最高裁判所の判決では、認知した人も認知無効の主張を認めました。
 現代科学では、DNA鑑定により高い確率で血縁関係の有無が明確になります。あなたと子の間の血縁関係がないことを主張、立証して認知を無効とすれば、あなたと子との父子関係はなくなります。

平成29年3月31日 大分合同新聞朝刊掲載

DNAで血縁ないこと立証を