大分合同新聞 法律あれこれ「調停委員の不適切発言」 清源万里子弁護士/記事PDF

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調停委員の不適切発言

Q. 私は、夫と裁判所で離婚調停中ですが、調停委員から「男は浮気をするもの。妻は浮気をした夫を許すのが当然」「離婚を切り出したあなたに慰謝料支払い義務がある」などと言われ、ショックのあまりうつになりました。今後どうすればよいでしょうか。


 A. 困りましたね。調停委員の多くの方はとても素晴らしく、私たち弁護士も尊敬していますが、たまに調停の席での不適切発言を耳にすることがあります。

例えばこれまでに次のような発言を聞いたことがあります。
 「離婚を先に言い出した方に慰謝料支払い義務がある」。これは間違いで、慰謝料を支払う義務は有責配偶者に発生します。
 「男女間でメールをすれば不貞となる」。これも間違いで、性的関係があれば不貞となります。
 「妻は浮気をした夫を許すのが当然だ」。浮気をした夫を許す義務は妻にはありません。
 また、信じられないかもしれませんが、代理人の女性弁護士に性生活の内容を尋ねたり(これはセクハラ発言になります)、父親から性的虐待を受けた10歳の娘と父親との面会交流を強引に実現させようとした事案もありました(子どもの福祉を考えると面会交流は不可です)。
 対策は次の通りです。
 (1)裁判所に事情を説明して調停委員を代えてもらう。
 (2)裁判官や調査官に同席してもらう。
 (3)家事事件に強い(離婚調停事件を数多く担当している)弁護士に離婚事件を委任して同席してもらう。
 なお、当事者と調停委員に特別の関係(例えば4親等内の血族関係)がある場合には除斥の申し出ができます(家事事件手続法は忌避制度は導入しませんでした)。

裁判所に対策求めて