大分合同新聞 法律あれこれ「親権者死亡時の子どもの監護」 清源万里子弁護士/記事PDF

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親権者死亡時の子どもの監護

Q. 夫の暴力がすさまじく、2人の子どもの親権者を私にして夫と協議離婚しようと思います。ただ、私が病弱なため、離婚後に私が死亡したときの事を考えると、子どもたちが心配で夜も眠れません。暴力を振るう夫に子どもの監護を絶対に任せられません。何か良い方法はありませんか。


A. 公正証書遺言の作成をお勧めします。

 (1)指定後見人
 離婚後はあなたが子どもたちの単独親権者になりますので、「未成年者に対して最後に親権を行う者」としてあなたは遺言で未成年後見人(例えばあなたの姉など)を指定できます。この遺言があれば、あなたの死亡後は指定後見人が子どもたちの監護をすることになります。離婚後、公証役場に行って遺言を作成してください。

 (2)離婚後の単独親権者の死亡 
 離婚後の単独親権者であるあなたが死亡した場合、未成年後見人を指定した遺言がなければ、子どもの親権が欲しい生存親である元夫が「親権者変更の審判」を申し立てる可能性があります。
 一方、あなたと一緒にこれまで子どもたちを監護してきた人たち(あなたの両親や兄弟姉妹など)も「未成年の後見人に選任してほしい旨の審判」を申し立てることができます。現在の養育状況や、子どもたちの意思について調査官の調査を経た上で審判が出ます。
 暴力を振るう元夫は親権者として不適任と思われますので、本件では親権者変更の審判は却下されると思いますが、難しい問題を含みますので弁護士に相談してください。

 なお一般論として、生存している親が親権者として適任である場合には、後見人選任の申し立てがある前に限らず、後見人が選任された後でも親権者変更を認める審判例が出ています。重要なのは、理屈ではなく、子どもの福祉の観点から監護の適任者が判断されるということです。

公正証書遺言作成を