大分合同新聞 法律あれこれ「「無断転貸」された場合 」清源万里子弁護士/記事PDF

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「「無断転貸」された場合 」 

Q. 私は、3年前にAに土地を貸しました。ところが最近になって、Aは1年前から私に無断でこの土地をBに貸していたことが分かりました。私は、このようなAとは賃貸借を続けたくありません。また、怒りが収まらないので、Aに損害賠償を請求したいと思うのですが、請求できるでしょうか。


A. 賃貸借の目的物を賃貸人の承諾なしに第三者に賃貸しすることを、無断転貸といいます。

 【無断転貸】
 民法は、原則として無断転貸を認めていないので、Aは、あなたの承諾がなければ、この土地をBに転貸することはできません。Aが無断転貸を行った場合、あなたは、Bに土地の明け渡しを請求したり、あなたとAとの賃貸借契約を解除することができます。


 【解除できない場合】
 ただし、無断転貸が行われても、常に解除ができるわけではありません。最高裁は、無断転貸がされた場合でも、賃借人の無断転貸が賃貸人に対する背信的行為とはいえない特段の事情がある場合(同居の親族への転貸など、利用主体が実質的に変わっていない場合)には、賃貸人は賃貸借契約を解除できないとしています。
 そのため、Aがこのような特段の事情を立証できた場合、あなたはあなたとAとの間の賃貸借契約を解除できなくなります。


 【借地借家法による例外】
 また、建物所有を目的とする土地については、借地借家法による例外があります。裁判所が、転貸が行われても賃貸人に不利となるおそれがないと判断した場合には、土地の転貸を許可することがあります。


 【損害賠償請求】
 民法は、無断転貸の場合に損害賠償請求できるとは規定していません。従ってAがBに無断転貸したことで、あなたに実質的な損害が生じていない限り、Aに損害賠償請求するのは難しいでしょう。

損害賠償請求は難しい