大分合同新聞 法律あれこれ「 相続の不平等 解消したい」 清源万里子弁護士/記事PDF

→記事PDF

相続の不平等 解消したい

Q. 先月、父が亡くなり、私と兄の2人が相続人になりました。兄は、父から、生前に住宅の購入資金100万円を援助してもらっています。また、兄は、父の生命保険金の受取人になっており、生命保険金500万円を受け取りました。そのため、父の遺産を2分の1ずつ相続するのでは、私と兄が不平等で納得できません。私と兄との不平等を解消する方法はありませんか。


A. 「特別受益」の「持ち戻し」をすることによって、あなたと兄との不平等を解消できる可能性があります。

【特別受益】
 被相続人(本件では父親)の生前に、特別に財産をもらうことを特別受益といいます。財産をもらった人を、特別受益者(本件では兄)といいます。民法には、特別受益を遺産分割時に清算する規定があります。つまり、相続財産に特別受益を加えたものが、全相続財産となります。そして、特別受益者の相続分からは、特別受益分は前渡し分として差し引かれます。これは、相続人間の平等を図るための制度です。


【特別受益の範囲】
 特別受益とされるのは(1)特定の相続人が受けた遺贈(2)婚姻、養子縁組のための贈与(持参金、嫁入り道具、結納金、支度金など)(3)生計資金として受けた贈与(住宅資金の援助や特別な学費など)―の三つです。


【生命保険金】
 生命保険金は、純粋な意味での相続財産には含まれません。そのため遺産分割のときに、持ち戻しの対象になるかどうかについて、審判例は分かれています。
 あなたの場合、住宅購入資金100万円は、特別受益として持ち戻しの対象になるでしょう。生命保険金500万円については、審判例は分かれていますが、持ち戻しの対象になる可能性はあります。

特別受益の持ち戻しを